「ほいじゃあ 入り口のとこまで」
そう言って日晩山の登山口まで連れて行ってくれたのは、御年七十一歳、公民館館長の大庭 完さん。
「ちょっと 入ってみるか?」
「もうちょっと行ったところに 竜の通った跡 いうとこがあってね…行ってみるかね!」
どんどん山の中を進んでいく。
山頂からの景色がうりの日晩山、しかし館長が目をつけるのはもっと他だったりする。
「ほらこれが、またたびじゃ。また旅ができるほど元気になるゆうてねえ」
「これは山菜のひとつじゃけえ。ほら、食べてみぃ」
道なきところをガシガシかき分けては 何かないか、何かないかと探している。
公民館長をはじめて十年が経った、
「館長になって初めの頃、真砂にはなんもにゃあと言われた。
でもほら、真砂にはなんでもあったじゃろ?」。