最初の講義は「里山保育」。
この人が真砂地区で「里山保育」を実践する真砂保育園の園長、本田行尚さん。
平成25年から真砂保育園の園長を務める。本職はお寺の住職。
「里山保育」とはいったい何なのか? 本田さんはこう語る。
「里山保育」とは、豊かな自然・地域をフィールドに「ひと」、「もの」への関わり方を感じ、学び、吸収することで、自分と他者を大事に思える心を育む保育のことです。
なんだか少し難しい…… 更に本田さんはこう続ける。
「わたし」という存在は、様々な人とのかかわりの中で生まれてきました。そして、周りにいる人たちによって、「わたし」の役割も変化します。このように、ひとも子どもも、周りの人たちとの関係=「地域」でそだっていくのです。
もっと難しい……(苦笑)
具体的に「里山保育」とはどんな保育スタイルなのか?
本田さんはシンプルにこう定義する。
「里山保育」=「山の保育」+「里の保育」です。
もう少し具体的に説明しよう。
「山の保育」では、子どもたちが真砂地区のありとあらゆるところを歩いたり、遊んだりすることで、想像力、対人関係、忍耐力、好奇心が育まれる。「山の保育」により、子どもだちの歩数、握力、平衡性、反復性などが自然と身についていくということだ。
「里の保育」では、子どもたちは地域の人々と意図的、主体的に関わるそうだ。毎日の散歩の時間には、その日の散歩コースで通りかかった地区のお宅や養護施設にお邪魔し、おじいさん、おばあさんとお話をする。これにより、同年代の子どもたちだけの世界に留まらない、多様な価値観に触れることができるんだそうだ。ちなみに日々の散歩コース自体も、子どもたちが事前に自分たちで話し合って決めるという。保育士さんは子どもたちの意思決定に基本的に介入しない。
本当にそんな保育が成り立っているんだろうか? この本田さんの話を、その後私は身をもって体験することになる。